安藤忠雄仕事をつくる
学歴も社会的基盤もない。仕事は自分でつくらなければならない。独学の建築家が大阪から、世界に闘いを挑んだ。気力、集中力、目的意識、強い思いが、自らに課したハードルを越えさせる。
- 祖母に育てられ、『うそを言うな』『約束を守れ』『人には迷惑はかけるな』と口うるさく言われた。
- プロボクサーとしてボクシングを励んだのは1年半ぐらいであろうか。私にとって貴重な体験だった。ロープに 囲まれた四角いリングの上で敵と向かい合い、自らをふるい立たせて極限まで闘う。最後に頼りになるのは『自分の力だけ』である。社会でも私にとってはひとつのリングなのである。
- 日本人は忍耐強く、緻密で繊細だが、創造力が無いというのが海外の一般的な評価だ
- 吉川英治『宮本武蔵』全六巻を3度読めという。そこから、「自立した人間として生きていくには覚悟がいる」ことを教えられた。幸田露伴『五重塔』からは、十兵衛は、「塔が倒れるときは自分が死ぬ時」と自ら塔に登る。そんな十兵衛の決意の姿に建築家として生きる覚悟を学んだ。
- 熱意ある人間は、人を動かすことが出来る。モノをつくろうとする人間にとって、大切なのは、どれだけの感動に出会えるか、それを積み重ねられるかにかかっている。
- 旅はひとりに限る。ただ一人見知らぬ国を歩く。目指す建築をやっと見つける。不安な道中に希望の明かりがみえる。建築をめぐりながら、自分自身と対話をする。まさに歩きながら考える。若い頃、何度となくこんな旅を重ねた。
- サントリーの佐治敬三氏との出会いで、「人間、前を向いて生きていることが一番大切」「ぶつかってもいいからとにかく自由にやれ」「いちいち学歴や職業など聞いておれん。一生懸命生きとるかどうか、それだけや」教わったことは数えきれない。
近頃の若者たちは、日本からなかなか海外に出たがらないと聞く。確かに、文化や社会常識の異なる外国に出ることで様々な問題が生じる。しかし、それを乗り越えていく勇気を忘れてはならない。一歩踏み出すことこそが、世界を拓いていくのだ。
私の事務所では入ったばかりの若いスタッフでも、海外出張に行かせて「一人で全部やってみろ」と突き放す。緊張感に包まれた中での外国での様々な体験が、社会を生きていく上で大きな糧となり、その人間を強くするからだ。
税理士 尾 中 寿
今月のお薦め図書 安藤忠雄著 『仕事をつくる 私の履歴書』日本経済新聞出版社 Title