私の尊敬する経営者に京セラの稲盛和夫名誉会長がおられます。稲盛さんは、全国各地で人生哲学や経営哲学を真剣に学ぼうとする経営者のために盛和塾という経営塾をされています。その経営問答をまとめた図書の『まえがき』に以下のように書かれていますのでご紹介します。
京セラ開業当初、「会社の目的とは、いったいなんだろうか」を悩み続けました。その結果、会社経営の真の目的は、エンジニアである私の夢を実現するのでは なく、従業員とその家族を守っていくことだと気づかされました。その時から、私は、「稲盛和夫の技術を世に問う」という当初の目的を捨て去り、京セラの経 営理念を「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」と定めました。
このように経営の目的を明確にした瞬間から私には何をするにも迷いがなくなり、みんなの為にいかなる苦労もいとわないという、新たな決意が湧いてくるのを 感じました。とあります。さらに、誰もがその実現を心から望み、苦労もいとわず努力しようと思うような大義名分が存在すれば、全従業員は力をひとつに会わ せることができるのです。すなわち経営理念を掲げたおかげで、全従業員の心がひとつにまとまったのです。そのことが京セラを今日まで発展成長させてきた最 大の理由であると私は思います。
さらに、「私の動機は、世のため人のためであり、心に一点の曇りもない」ことを確信しました。「会社は、何のために存在するのか」、つまり会社の大義とは 何かということを自ら問いながら、あるべき姿を追い求めなければなりません。経営者が大義名分を定め、それを本気で貫き通せるかどうかによって、企業の成 否は決まるのです。と。
ここに、『経営の原点』があるのではないでしょうか。
税理士 尾中 寿
今月のお薦め図書 稲盛和夫著 『高収益企業のつくり方』 日本経済新聞社