会社の改革がうまく進むときには、必ず9つのステップがきちっとふまれている。逆に、改革がうまく進まない時には、9つのステップのどこかで改革の勢いを殺す障害が発生している。
①期待のシナリオ(『具体性不足の壁』)
俊敏な経営者は、自分にとってはこうなってほしいという『期待のシナリオ』を明確にもっている。この段階での障害は、期待のシナリオが曖昧なまま放置されることで起きる。「こだわり」や「あるべき姿」が具体的に認識されていない。
②成り行きのシナリオ(『現実直視不足の壁』)
このままいけば事業はどうなるのかの見通しのことをいい、不振の事業組織では、「現状の問題点」さえ十分に認識されていないことが多く目標への執着心が薄い。
③切迫感(『危機感不足の壁』)
「成り行きのシナリオ」が「あるべき姿」から外れて不安を感じさせるものであれば、「これはまずい」と深刻さを認識することになる。切迫感ないし危機感を抱く。しかし、不振企業では、危機感など感じていない人がたくさんいる。
④原因分析(『分析力不足の壁』)
現状に危機感を抱いた人は必ず、「自分はどんな手を打てばいいのか」「なぜこんなことになったのか」と自問する。すなわち、行動を始める前に改めて原因分析が必要になる。
⑤シナリオ作り(『説得性不足の壁』)
成功する戦略は、常に話が単純である。長い時間をかけなければ説明しきれない戦略は劣った戦略である可能性が高い。「改革シナリオ」は、できるだけシンプルでなければならない。
⑥決断(『決断力不足の壁』)
改革リーダーが本当に思い切った改革に「突っ込んでいく」つもりでいるなら、リスクの高い選択肢を選び、次々と決断を重ねていかなければならない。しかし、経験の見識を持ち合わせていない人は、「まだ決めなくともよいだろう」と先延ばしの態度が出やすい。
⑦現場への落とし込み(『具現化力不足の壁』)
改革シナリオに対し、各論に反対したり、実行案の細部を曖昧にしたり、サボりを決め込むことがしばしば起きる。緻密な落とし込み能力とリーダーシップが不足の時起こる。
⑧実行(『継続不足の壁』)
あくまで愚直に行動、行動、行動の繰り返しだ。日本企業の改革がなまくらになりやすい理由は、「突出部分」の設定と「一気苛成の勝負」というアプローチの不足から起こる。
⑨成果の認知(『達成感不足の壁』)
日本企業では、リスクをとった者への報酬が不当に低いことが多い。人事的にも、金銭的にも報われないことが多い。
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税理士 尾 中 寿