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法人税額から一定額が控除される『研究開発税制』とは

『研究開発税制』とは、研究開発を行っている法人に試験研究費が発生した場合、総額のうち一定の割合を各事業年度の法人税額から控除できるという制度です。
イノベーション創出につながる中長期的な研究開発等を促すために創設された制度で、研究開発に積極的な企業にとっては、大きな助けとなることは間違いありません。
今回は、対象となる研究開発や控除の種類などについて説明します。

研究開発税制が適用される研究開発の範囲

日本政府は、国の成長力や国際競争力を強化するため、企業におけるイノベーションの創出を重要視し、これまでさまざまな形でサポートを行ってきました。
その一つが、『研究開発税制』の創設です。

企業の研究開発は、イノベーション創出のためには必要不可欠なものですが、技術的な課題も多く、成功するかわからない不確実なものでもあります。
また、どのような研究開発からイノベーションが生まれるかは予測できません。
そこで、研究開発税制により、幅広い分野や業種、規模を対象に、継続的な支援を行っているのです。

この制度では、青色申告法人の各事業年度において損金に算入される『試験研究費』が発生した場合、その総額のうち一定割合に相当する金額が、その事業年度の法人税額から控除されます。

税額控除の対象となるのは、以下の『試験研究費』です。

●製品の製造または技術の改良、考案、発明にかかる試験研究のために要する費用のうち一定のもの
●対価を得て提供する新たな役務(サービス)の開発で所定のプロセスを経て行われるものにかかる試験研究のために要する費用で一定のもの

国税庁によれば、試験研究とは『工学的・自然科学的な基礎研究、応用研究および開発・工業化等』を指すもので、人文や社会科学などの研究開発は対象になりません。
たとえば、事務能率・経営組織の改善にかかる費用や、販売技術・方法の改良や販路の開拓にかかる費用、単なる製品のデザイン考案にかかる費用などは含まれません。
一方、新製品ではなく生産中の製品や既存の技術であっても、改良のための研究開発であれば対象になります。

また、サービスに関しても、やはりイノベーションの創出に繋がる研究開発でなければ、研究開発税制の対象とはなりません。
対象となるのは、たとえば、ドローンなどを活用して収集したデータを分析し、リアルタイムで自然災害予測を通知する『自然災害予測サービス』や、各個人の運動や睡眠状況、心拍等の健康データを採取・分析したうえで最適なフィットネスプランを提供する『ヘルスケアサービス』などです。

控除に関する3つの制度

研究開発税制には『総額型』『中小企業技術基盤強化税制』『オープンイノベーション型』の3つの制度があります。

【総額型】
法人税額の25%相当額を上限に、試験研究費総額に6~14%の控除率を乗じた金額を法人税から控除できます。
しかも、設立が10年以内で、欠損金の翌期繰越額があるベンチャー企業であれば法人税額の40%相当額を上限にすることができます。

【中小企業技術基盤強化税制】
中小企業に向けての措置で、中小企業者等に該当する法人等は法人税額の25%相当額を上限に、試験研究費総額に12~17%の控除率を乗じた金額を法人税から控除できます。

【オープンイノベーション型】
特別試験研究費が対象になる措置で、特別研究機関や大学、別の企業などと共同で行う研究開発に要する費用、特別研究機関や大学などに委託して行う研究開発に要する費用、別の企業に支払う知的財産権の使用料がある場合に、自社が負担した特別試験研究費の一定割合を法人税から控除することができます。

控除の上限は法人税額の10%相当額で、『総額型』や『中小企業技術基盤強化税制』の控除額とは別に、『特別試験研究費の額×各控除率』の額を法人税から控除できます。
ただし、本制度を活用するために計上した試験研究費については、『総額型』および『中小企業技術基盤強化税制』を活用するための試験研究費としては計上できません。
控除率は、共同で研究開発を行った相手先によって異なり、たとえば、特別研究機関や大学であれば30%、新事業開拓事業者であれば25%、中小企業者であれば20%となります。

このオープンイノベーション型で控除を受ける場合は、共同試験研究や委託試験研究等を行う前に両者で契約や協定を結び、費用の分担や成果の帰属先などを決めておく必要があります。
また、共同研究の相手が国の研究機関や国立研究開発法人等以外の大学やベンチャー企業等の場合の費用および、中小企業者等への知的財産権の使用料については、特別試験研究費について税理士や公認会計士、監査役などの監査を受ける必要があるので注意しましょう。

研究開発税制は毎年のように、範囲の拡大や上限の見直しなどの改正が行われており、どんどん使いやすくなっています。
研究開発に注力している企業は、専門家とも相談のうえ、積極的に活用してみてはいかがでしょうか。

※本記事の記載内容は、2021年2月現在の法令・情報等に基づいています。

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