人は賃金が高ければ高いほど「よく働く」というものでもありません。アメリカの臨床心理学者ハーズバーグ氏は、仕事におい て満足及び不満足をもたらす要因を、「環境や経済的欲求」(不満足要因)と「向上心を満たす欲求」(満足要因)の2つに分解しています。そして、不満足要 因である賃金や作業条件等は満たされなければ不満を引き起こしますが、満たしたからといっても満足感につながるわけではなく、単に不満足を予防する意味し か持たないといいます。一方、満足要因である向上心を満たす欲求とは「達成感」「人から認められること」「仕事そのもの」「自己成長」などであり、これが 実現できないと満足感を高めることはできません。つまり、この2種類の欲求は互いに独立していますが、一方の欲求が完全に満たされても、別の欲求が満たさ れない場合、真の満足感は得られないとしています。
賃金だけでなく、向上心に関係する要因を改善していかないと、「やる気のある」「働き甲斐を感じる」社員には育たないでしょう。不満足要因を整備して社員の職務不満を取り除くとともに、満足要因を利用して仕事へのモチベーションを高めていくことが必要です。
税理士 尾中 寿
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