事業承継とは
円滑な事業承継のために
事業承継とは、会社の経営を次世代に引き継ぐことです。単なる株式の移転だけでなく、経営権の承継、従業員の雇用維持、取引先との関係継続など、多面的な検討が必要です。
特に相続税の観点では、株式の評価額が高額になりがちな中小企業において、適切な対策を講じることで大幅な節税効果を得ることができます。
事業承継の3つの側面
経営の承継
経営権・意思決定権の移転
資産の承継
株式・事業用資産の移転
知的資産の承継
経営理念・ノウハウの継承
事業承継税制の活用
事業承継税制(特例措置)による納税猶予
制度の概要
- 非上場株式の贈与税・相続税を100%納税猶予
- 雇用確保要件の弾力化で適用しやすく
- 複数の後継者への承継も可能
- 事業の売却・廃業時に株価が下落していた場合は、再計算した税額を納付し、従前の猶予税額との差額を免除
主な適用要件
- 特例承継計画の提出(2027年9月30日まで)
- 中小企業者であること
- 後継者が代表者として経営を継続
- 株式等を継続保有
- このほか、上場会社等・風俗営業会社でないこと、資産保有型会社等でないこと、総収入金額が零を超えていること、常時使用従業員が1人以上であることなど、会社・先代経営者・後継者ごとの要件があります
特例承継計画の提出期限は2027年(令和9年)9月30日まで(令和8年度税制改正で延長)
ただし、事業承継の実行期限(2027年12月末)は延長されていません。計画的な準備が重要です。なお、納税猶予を受けるには、計画の提出のほか、都道府県知事の認定を受け、税務署へ申告する必要があります。
株式評価額の引き下げ対策
評価引き下げの手法
1. 類似業種比準価額の活用
配当・利益・純資産(簿価)のうち、直前期末で2つがゼロ、直前々期末で2つ以上がゼロの会社(比準要素数1の会社)は、原則として純資産価額方式で評価されます
2. 純資産価額の圧縮
評価会社が課税時期前3年以内に取得・新築した土地・家屋は、課税時期における通常の取引価額で評価します
3. 持株会社の活用
総資産に占める株式等の割合が50%以上の会社(株式等保有特定会社)は、原則として純資産価額方式で評価されます
4. 種類株式の活用
議決権を制限しても、評価額は原則として下がりません(無議決権株式は、議決権の有無を考慮せずに評価するのが原則です)。事業承継税制の納税猶予の対象は、議決権に制限のない株式等に限られます
評価方法の見直し
国税庁の有識者会議(令和8年8月20日の第5回)の資料に、評価体系の見直しの骨子が示されています。類似業種比準方式と純資産価額方式に基づく評価体系を廃止して評価方式を原則一本化し、資産管理会社や組織再編成直後の会社は特定の評価会社として原則として純資産価額方式で評価する案です。評価額の恣意性・操作性を排除するとされ、最終的には税制改正プロセスで決まります
実行時期の考慮事項
承継前
相続税の負担を減らす意図で行った対策は、財産評価基本通達6(通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産は、国税庁長官の指示を受けて評価する)の適用が問題になることがあります
承継実行時
贈与税の納税猶予・分割贈与の活用
承継後
事業承継税制の継続要件をクリア
次世代への準備
再度の承継に向けた長期的な対策
承継方法の比較
| 承継方法 | メリット | デメリット | 適用条件 |
|---|---|---|---|
| 親族内承継 |
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子・孫等への承継 |
| 役員・従業員承継 |
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MBO等の活用 |
| 第三者承継(M&A) |
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株式譲渡・事業譲渡 |
事業承継の進め方
現状把握
- 会社の現状分析
- 株式評価額の算定
- 後継者の意向確認
- 課題の整理
基本方針決定
- 承継方法の選択
- 承継時期の設定
- 税務対策の立案
- 関係者への説明
対策実行
- 株式評価の引き下げ
- 後継者の育成
- 事業承継税制の申請
- 組織再編の実施
承継実行
- 株式の移転
- 代表者の交代
- 各種手続きの完了
- アフターフォロー
よくある質問
後継者が確定し、特例承継計画を提出できる状態になったら、できるだけ早期に適用を検討することをお勧めします。ただし、会社の業績や株式評価額の動向も考慮して最適なタイミングを判断する必要があります。
特例事業承継税制では、最大3名の後継者に株式を分散して承継することが可能です。相続の場合、後継者とその親族などで総議決権数の過半数を保有していることが要件です。後継者が複数のときは、各後継者が議決権の10%以上を有し、かつ、同族関係者のうちのだれが有する議決権の数も下回らないことが必要です。
M&Aの場合、売却益に対する所得税・住民税が発生します。事業承継税制の特例措置の適用を受けている場合は、事業を売却・廃業する際に株価が下落していたときに、譲渡対価の額等に基づき再計算した税額を納付し、従前の猶予税額との差額が免除されます。一般措置には、この仕組みがなく、猶予された税額を納付します。
非上場株式の評価方法は、会社の規模などで分かれます。大会社は原則として「類似業種比準方式」、小会社は原則として「純資産価額方式」、中会社は両方を併用して評価します。同族株主以外の株主が取得した株式は、会社の規模にかかわらず、原則として配当還元方式で評価します。会社の規模や保有する資産の内容により、どちらの評価方法の影響が大きいかが変わります。